デザイナーは自分のことを典型的なユーザであると考えてしまうことが多い。しかし実際には、デザイナーが習熟するということと、ユーザが習熟することの間には大きな違いがある。デザイナーはデザインしている間に自分で設計している道具に習熟してしまうことが多い。一方、ユーザが習熟しているのはその道具を使って行おうとしている作業なのである。
デザイナーはその製品にとてもよく慣れてしまうので、問題が起こりがちな部分を見つけたり理解することはもうできなくなってしまう。一度失われてしまった初心は、簡単には取り戻せない。デザイナーの立場からでは、ユーザが陥りがちな問題や、起こしがちな思い違いや、生じがちなエラーなどを予測するのはほとんど出来ない相談である。