先日、CP+2019 で行われた、鈴木 佑介(映像作家)さんによるプレゼン「動画もRAWの時代。BenQで作るカラーグレーディング環境」が、ちょうど気になっていた興味深い内容だったので、備忘録がてらざっくりまとめておく。
カラーグレーディングとは
カラーグレーディングとは色を演出すること。そのためには、色の情報量が多く、解像度が高いフラットな情報、つまりはLogファイルやLawファイルが必要。
カラーグレーディングに重要な要素
- ダイナミックレンジ(stop数)
- ビット深度(階調)
- クロマサンプリングレート(色情報)
- カラースペース(色域)
ダイナミックレンジ
stop数が高ければ高いほど、明部から暗部まで白飛び、黒つぶれがなく情報を残すことができて、人間の見た目に近い明暗差で撮影できる。
ビット深度
色の階調。階調数が多ければ、より豊かな色表現が可能になる。
bit | 階調数 | 表現色 |
8bit | 256 | 1677万色 |
10bit | 1024 | 10億7300万色 |
12bit | 4096 | 687億1000万色 |
16bit | 65536 | 281兆4750億色 |
クロマサンプリングレート
画像をYUV(デジタル信号)に変換した際のデータレート(データ量の間引き)
Y(輝度)
U(赤色と輝度の差の色差信号)
V(青色と輝度の差の色差信号)
人間の視覚特性を利用してUとVの解像度を落とすことができる
4:4:4 / 4:2:2 / 4:2:0 / 4:1:1
4:4:4 は大まかな輪郭はしっかりしているし、色ぬりもしっかりされているため、色を抜きやすい。
ところが、4:2:0 は大まかな輪郭はしっかりしてるけど、色ぬりが雑で色の境目がはっきりしていない(色の階調が少ない)ため、カラーグレーディングには向かない。
つまり、階調情報が多く、クロマサンプリングレートが高いと色の分離が楽になり、カラーグレーディングがしやすくなる。
カラースペース
色域は外に向かえば向かうほど色の情報が多く、Rec.709 (sRGB)の色域でみると淡く見える。
※素材によって色が浅く見えるのは、広い色域で撮影しているため。
カラーグレーディング 基本の3ステップ
- 元素材
撮影素材を用意する。 - ノーマライズ
プライマリグレーディング。コントラストや彩度を調整し、全体の色のバランスを整える。 - 演色
セカンダリグレーディング。照明効果を与えたり、一部の色を調整したり、色で演出を行っていく。
カラーグレーディングするための映像スペック
10bit 4:2:2 は最低必須スペック。4:2:0はカラーグレーディングに向かない。
余談:悲しいかな。ぼくのメインカメラはSONY α7III。これは、8bit 4:2:2 で、最低必須スペックを満たしていません…。ちなみに、ダイナミックレンジは約15ストップ(ソニー測定条件)で、次に紹介するBlackmagic Pocket Cinema Camera 4Kは13ストップ。
カラーグレーディングに特化したコスパ最強カメラ→ポケシネ4K
コスパの素晴らしいオススメカメラは Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K(通称: ポケシネ4K)。
ただし、4K60pが撮影できる「15万円でお買い得な便利カメラ」ではなく、たった15万円で「グレーディングするのに最適なRAW動画が撮れるカメラ」とのこと。
つまり、ポケシネ4Kは便利なカメラではない。知識と覚悟がないと痛い目に合うかもしれない。
余談:痛い目に合った人から破格で譲らせていただけたらなぁと淡い妄想。